■はじめに―風呂の分類について
一口に“風呂”と言っても、その形状はさまざま。
世界を見ると、むしろお湯に浸かる風呂は少数派。
液 体 | 水、湯、温泉 | 熱湯浴 温水浴 冷水浴 海水浴 温泉浴 修飾浴(例・入浴剤) シャワー浴 圧注浴 |
---|---|---|
蒸 気 | 水蒸気 | 熱水蒸気浴(例・スチームサウナ) 温水蒸気浴(例・ミストサウナ) |
気 体 | 空気 | 熱気浴(例・乾式高温サウナ) 暖気浴(例・乾式低温サウナ) 冷気浴(例・コールドサウナ) |
外気ほか | 日光浴・気候浴 成分吸入浴(例・ラドン) 森林浴 |
|
固 体 | 砂&泥、岩石 | 砂浴(例・砂風呂) 泥浴(例・ファンゴ) 岩盤浴 |
日本人にとって「風呂」という概念は、「お湯につかる」ことを指します。
しかし、世界的に見ると、お湯にどっぷりつかるところは少数派で、サウナのような気体やスチームによる入浴、あるいはシャワー浴が主流です。
ま、考えてみれば日本でも一般大衆が利用できる公衆浴場の起源は、室町時代の東大寺の施湯あたりといわれていますが、「お湯」に浸かる公衆浴場が出来たのは、江戸時代もしばらくしてからのことで、それまではやはり蒸し風呂でした。水が豊富で、薪が供給できた日本なればこその、天の恵みだったと言えます。
確か1970年代後半だったと思いますが、ドイツ中部のクアオルト(指定保養地)で、町はずれの岩山に、30畳ほどの横穴が掘られていて、たくさんの椅子が置いてあり、洋服を着たままの状態で、腰掛けているだけの「温泉」を体験しました。
日本人からすると奇異な感じですが、彼らにとっては十分に“入浴”しているつもりなのです。
これはかつて、ドイツなどのクア施設でたまに見かけられた「ラドン吸入浴」の一種だったわけですが、残念ながら1990年代半ば、再び当地を訪れたときには閉鎖されていました。お湯と関係なくても「入浴」感覚という好例でしょう。
本編では、私たちの概念とはかけ離れた「風呂」も出てきますが、こうした意味からだということをご理解いただきたい。
また、川や湖での沐浴、湧き出た温泉池などへの入浴は、それこそ太古の昔からあったわけですが、ここでは内容成分に関係なく、あくまでも人の手によってつくられた施設で、個人ではなく多数が使うケースを「共同浴場」と定義しました。
それでは、ごゆっくりとお楽しみください。
2004年追補改訂